Wednesday, January 2, 2013

園長からの手紙 (日本語)

福島の子どもたちの未来に向けて

はじめに

  この度、わたくしども児童養護施設堀川愛生園は本園4ホームならびに食堂兼台所、高野ホー ム(地域小規模児童養護施設・グループホーム)の改築をすることにいたしました。 

  歴史的に見れば創設以来67年目を数えようとしているなかで、本園は1969年に園舎の改築をし ています。以来43年ぶりの大改築となります。ここに至りました経過と現状をあわせてご報告とお願 いを申し上げます。

  当園は、2011年は5歳児から高校3年生まで総勢40名の子どもたちと21名の職員が、地域のグ ループホーム2軒を含めて6軒の小舎で生活しておりました。 

  昨年3月11日ならびに4月11日の2度にわたる大きな地震を経験いたしましたが、幸い子どもたち が生活している小舎には生活を続けるのが困難になるほどのダメージは受けずにすみました。た だし、1969年に建てられた小舎ですので、耐震強度で言えば奇跡的に倒壊せずに済んだといって も過言ではありません。さらに高野ホームにおいては旧駐在所、旧診療所を棚倉町から払い下げ ていただき、2軒を棟続きに手を入れた程度でしたので、築年数で言えば本園ホームと同じかそれ 以上といえます。

   この地震を期にこれまで再三計画をしてまいりました本園4ホームと高野ホームあわせて5軒の 建て替えが急務となりました。しかし、資金的にも公的補助を受けないと、小さな法人ではできない ところではありました。震災以降、多くの方々からお見舞いやお励ましのご厚志はいただいてまいり ました。福島県より2011年秋に「耐震化補助事業」として園舎改築事業に補助金を交付してくださ ることとなり、2012年度に園舎改築事業を行うことを理事会にて決定しました。そして、3ヶ月間とい う短い期間ではありましたが、子どもたち、職員一同が熱心に「新しいおうち」のために知恵を出し 合い、意見を交わしてきました。 

  半年前には予想もしていなかったところの、愛生園の「夢」が形になることとなりましたことは、施 設で生活することを余儀なくされている子どもたちにとっても、大きな希望の光となっております。事 業が完了する予定の2013年3月までに無事に「新しいおうち」ができてくれることを日々祈っており ます。 



福島の今

  福島原子力発電所事故の被害も同県に生活する者にとっては深刻な問題です。当園は原発よ り半径80キロメートル弱に位置しています。最近は毎日平均して、0.2マイクロシーベルトという放射 線量の数字が計測されています(2012年7月現在)。今年に入って、厚生労働省が福島県内の児童対象の施設に対して定点放射線量測定器を設置いたしました。さかのぼれば昨年4月半ばより 再開した小・中学校では当初、登校時にマスク・帽子の着用を義務付けました。当園がある地域は 外出制限等まではいきませんでしたが、運動会は短縮、夏のプール学習は中止になるなど、子ども たちの生活にも多大な影響を及ぼしました。 

  当園でもこの問題は今もなお継続しており、子どもの背後にある家庭にも影響が出ているところ では、問題の深刻化は避けられない所だと思っています。 

  また、震災後1年以上経過していく中で、震災で直接的に被災した子どもよりも、震災後、原発の 影響などで家庭が不安定な状況となり、事態の先行きが見えない中で、子どもが犠牲になる危険 が高くなることも予想されます。そうなれば福島県内の施設の子どもの数が増えていくことにも繋がります。


おわりに

  家庭的に恵まれず、施設での生活をしなければならない子どもたちにとって、たくさんの方々に温 かく見守られ、ご支援をいただいていることは、日々の生活の励みにもなり、笑顔で生活する元気の 源ともなります。 

  今後とも、小さな歩みではありますがお祈りの内に覚えていただければ幸いです。


堀川愛生園 園長
伊 藤 信 彦 

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